今でも忘れられないことがあります。
ある年の冬、2人は身も心も疲れ果てて沖縄へやってきました。
そのころ、沖縄県立博物館?が首里の龍潭池に面してあったと思います。
その博物館を見学して、龍潭池に面したところまで歩いたら「潭亭」というお店がありました。
辺りに入りたいお店もなかったので、昼食をと何気に入りました。
真っ先に、気づいたのが匂いです。
店内に、ありんくりん、ありやーくりやー植物が無造作に干してある匂いでした。
その何とも言えない匂いの中で、ランチとしては¥2500(なんか異常に高い!とおもったがそれしか安いメニューがない)という定食を注文しました。
すべてが、手間暇かけた料理で、30分ばかりかけて出てきたでしょうか?
今でいう、沖縄か八重山のスローフードだったんです。
食事中から気づいてたのですが、食べて外に出て嫁はんとどちらともなく顔を見合わせました。
心と体にたまっていた澱(おり)のような徒労感が、跡形もなく消し去られていたのです。
「ねぇ、なんか気が付いた?」
「ウン、違うねぇ」
「不思議だね」
後年、嫁はんは「食べているものが、体にじゅわ~っと沁みこんでくるんやわ」と人に話していますが・・・・。
そのお店は、翌年その場所に行くと「異人たちの夏」のようにきれいさっぱりなくなっていました。
記憶の中だけの、お店になってしまったのです。
3年も経った頃・・・・。
店の呼び名も、うろ覚えながらインターネットの検索で見つけ出しました。
八重山料理「潭亭」。
その後、何度となく通っています。
ゆいれーる儀保の駅を降りて徒歩10分、住宅街の坂を息を切らしながら登り切った高台に移転していました。
対山には、首里城の赤い弁柄彩色の全容が夜になると食事をするバルコニーから望め、右手に目を転じると那覇港の構築物やエメラルド色の東シナ海が日の光に煌めきます。
夜は、首里城のライトアップを眺めながら、部屋ひとつ隔てたところで、静かにご主人が三線を奏でながら太く低い声で語るのです。
異国情緒・非日常を味わうには、これ以上のロケーションもあまりないと言うほどの経験ができます。
そこで・・・・。
初めて訪れた時の、食後のあの清爽感は何だったのか?
あの感覚が、味わえないのです。
ずっと・・・・・。
それは、私の幸せ度がUPして感じられなくなったのか?
ずっと考えていました。
先日、「脱法ドラッグ」ならぬ「脱法ハーブ」が新しい麻薬として問題になっていると報道されていました。
うっすらと、気づいてました。
今のお店と前のお店の違いは、あの何やら種類はわからないけれど種々雑多な雑草を干している不思議な香りが今のお店にはないことなのです。
「うつ」の症状に囚われ、どうしようもない時に頼ったのが香りの専門の方のお店でした。
そのお店は、精神科のお医者さんが処方のために注文するスペシャリストのお店です。
医者にもかからず、一時期「ラベンダー」の抽出オイルをタオルに沁みこませて枕につきました。
それは、下手をすると鎮静効果すぎて症状を悪化させることになるのですが、安静効果もあるのです。
私たちが、出口も見えないどん底で出会ったあの感覚は、八重山か沖縄の野草のハーブ効果だったに違いないと今では思っています。
八重山の野草の研究と言うかそんなページを、仕事が少し早く終わり捜していました。
「潭亭」のご夫婦も、本出版されています。
この辺の本を、アマゾンで注文したいなと思っています。
沖縄に住めたら、こんな楽しみ嬉しいな。