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2013年02月25日

カムイたちの黄昏、その10

あらすじは、この記事の最後のカテゴリーで確認できます。

さてさて、鬱と言う状態に、陥ったことがあります。

医者には、行きませんでしたので”鬱と言う状態”としか正確には表せない。

たぶんそれほどひどかったのだと想う。(ヨメはんと息子が、私を明日精神科医に見せに行こうとしていた。)

なんせ寝られない、心臓ドキドキ、突然心筋梗塞のように胸痛む、思考が停滞、人の話が理解できない、話すことに恐怖を覚える・・・・・・。

幸いだったのは、還ってこられたこと。

最近は、鬱にたいして脳のどこに対応したらよいかとか、やはり研究が進んでいるそうです。

体も含め、脳内バランスに必要な成分が足りなくなったとき症状が現れやすい。

アルツハイマーの発症過程と類似点があるかも。

社会との接触や疎外感が増幅すると気持ちの問題が作用する。

クスリにより一時的な緩和は症状に対して、できるのだけれどもやはりそれをもたらした原因解決が無いと繰り返しのループにはまってしまう。

ストレスが一因だと思う。

”鬱状態”の一番厄介なことは、原因も自覚もしっかりわかっているんだけれども、引きずり込まれていくのに抵抗できないこと。

これは、絶え間ない精神の衰弱を伴います。

そんな自分の実体感を、タケルがブラックホールの呪縛に捉われていく描写の中に込めてみました。

そんなこんな、かなり実験をしています。

おまけは、いま”鬱の入り口”だなと認識できるようになった。

そんなとき、自分で、心のケアをします。

”自分は一人じゃないんだ”

”あなたがいるからここにいる”

心底そう思えるような人生のパートナーが一人でもできればよい。

そのためには、自分が相手を信ずる努力をすること。

自分にそう言い聞かせて、”鬱の罠”から逃げることにしています。

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龍の体内にて


自分が溶けていく。

時間が溶けていく。

それは、光が造りだしてきた時間との決別でもあった。

無に戻っていく感覚。

音も聞こえなくなり、抗(あらが)う自分の動きすべてが重く封じ込められていく。

薄れ行く意識の中で、カナシの声がする。

“タケル!あなたも剣の中に入ってきて!”

タケルの心には、“無”が広がっていた。

“無”が虚ろになって、自分が崩れていく。

なにか、心の軸が失われ拠(よ)るべきものなく不安定になりひたすら哀しい。

それはすべてが理解されているのに、それでも呑み込まれていくような感覚だった。

タケルの自らの意思とは無関係に、どうしようもない“虚無”が自分を包み込んでいった。

“タケル―!早く!”

突然、カナシの魂(ちむ)がタケルの魂(ちむ)に向かって伸びてきた。

かすかに残ったタケルの魂(ちむ)は、彼が握っていた草薙の剣へと導かれていった。

この時まで、光の精が与えた衣は何の反応も示さなかった。

水中を漂うように、ゆっくりとタケルは剣を握り”黒い穴”へと吸い込まれていった。

剣の中で、タケルはカナシとかろうじて意識を保っていた。

草薙の剣は、分解も破壊もされず深い闇の中に浮かんでいた。

タケルという実態は、闇にまぎれもう存在を確かめることさえできなかった。

剣とそれを覆う衣だけが虚無の中に浮かんでいる。

・・・・・衣の糸目一つ一つが闇の中で光りはじめた。

輝きは増し、呑み込まれた”黒い穴”の入口が真上に浮かび上がった。

”黒い穴”の入口には、数多くの光の粒が集まり始めていた。

”黒い穴”の奥は、灯りがともったようなになっている。

光の粒が、自らの意思のように一粒一粒が1本の糸のようにその灯り目指して吸い込まれていくように”黒い穴”へと向かった。

中にいるタケルとカナシには、”黒い穴”の入り口から輝やく糸が降りてくるように見えた。

その糸の先端が、衣に到達したとき衣の糸目に沿って、光の粒が衣にからまり始めた。

穴に入り輝きを失っていくはずの粒たちが、煌(きら)めきを失わず入口と光の線でつながって行く。

剣の中で意識だけになった二人を、目もくらむような光が包み込む。

剣の中の世界が、光のエネルギーに満たされていくのがわかった。

光亡き世界に光が満ち、”黒い穴”の中に何かが起こりつつあった。

・・・本来は、あってはならないこと。

”黒い穴”のなかで、絶対矛盾が起きはじめていた。

矛盾は、矛盾を呼びやがて必然へと向かう。

・・・・衣のまわりの闇が白く輝き始めた。

タケルは自分の体が、闇の中で再生しはじめたのを感じた。

闇の中で、タケルは剣を握りしめ浮いている。

その体は、光に包まれている。

タケルの意識のなかの魂(ちむ)が吠えながら、剣の柄を握る”タケル”へと駆け上っていった。

タケルの意識は剣の中にとどまっている。

何一つ飾ることのなく純粋に闘うという本能が魂(ちむ)となって己の肉体へと戻っていった。

剣が魂(ちむ)に支配され、剣に取り込まれていった光のエネルギーは増殖を始めた。

剣の中は、これ以上ないほどの光のエネルギーに満たされた。

剣から、エネルギーがほとばしり始めた。

やがて剣から、闇の世界にすさまじいエネルギーが放射された。

エネルギーは、闇夜を割き、走る雷(いかずち)となって”黒い穴”と”虫の穴”のつなぎ目を縦横に走り回った。

光を超えるものの姿が、其処に表れていた。

光と闇がせめぎ合う。

宙(そら)の始まりのような爆発が”虫の穴”で起こった。

中心に、剣とともにタケルとカナシがいた。

やがて、闇は遥か下方に去り、上方は白く輝く空間へと変わっていった。

インガンダルマたちの言う、入口と出口が逆転したのだ。

空間を正のエネルギーが満たす。

永遠の収縮しかない世界に、とどまることを知らない膨張がはじまる。

光の粒たちは、そのエネルギーと溶け合い増殖を繰り返しながら金色(こんじき)の龍の姿になっていった。

地中で朽ち果てかけた青龍は光の粒とともに、金色(こんじき)の龍へと転生した。

タケルを背に乗せ、金色(こんじき)の龍は入り口となった穴へと一気に飛翔した。

穴を抜けるとタケルは元の大きさに、金色(こんじき)の龍は巨大な姿になっていた。

湖の水は干上がっていた。

眼をやると、岩壁に鞘が1本突き刺さっている。

十束剣(とつかのつるぎ)の鞘だった。

精隕岩達磨(インガンダルマ)一体になった金色(こんじき)の龍がタケルをそっと湖底に降ろした。

隕岩達磨(インガンダルマ)たちが、タケルとカナシに語りかけた。

”その時が、いつかは判りませんでした。黒い穴の手前なのかその中なのか”

”そのために、どのようにしたら良いかも判りませんでした。”

”これは、星が誕生するときの・・・・、いや、宙(そら)が生まれた時の光景なのです。”

”そのために、あなた達の魂(ちむ)の力が必要だったのですね。”

”私たちには、魂(ちむ)はありません。”素(そ)だからです。”

” 魂(ちむ)とは別の次元の成り立ちのものです。”

”私たちは、宙(そら)に還り元の”素(そ)”へと戻ります。”

”ありがとう。”

”いつかまたお目にかかりましょう”

金色(こんじき)の龍は、暗い地底の道を長い光の帯となって地上へと駆け上がり、一気に天へと駆け上がっていった。


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